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TPPが日本に与える影響(5)

TPPが日本に与える影響(1)>>TPPが日本に与える影響(2)>>TPPが日本に与える影響(3)>>TPPが日本に与える影響(4)>>本記事

 

経済

A.GDPはどうなる?

TPPに参加することで、GDPが増えるのか減るのか。

これは、各省庁により試算が違っていました。

 

まず、農林水産省

こちらは、「国境措置撤廃による農産物生産等への影響試算について」という試算を出しています。

この試算の条件は以下となっています。

試算の前提

○ 19品目を対象として試算

 [米、小麦、甘味資源作物、牛乳乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵 等 ]

【基準】 関税率が10%以上 かつ 生産額が10億円以上 (林産物・水産物は含まない)

※国産農産物を原料とする1次加工品(小麦粉等)の生産減少額を含めた。

この上で、農産物の生産減少額は4兆1千億円程度、国内総生産(GDP)減少額は7兆9千億円程度としています。

 

一方、経済産業省

こちらは、「TPP不参加による基幹産業の損失」・「試算総括表」という試算を出しています。

この試算の条件は以下となっています。

※自動車、電機電子、産業機械の主要品目(輸出金額ベー スで約7割相当)について試算。

(ア)日本がTPP、日EUEPA、日中EPA いずれも締結せず、

(イ)韓国が米韓FTA、中韓FTA、EU韓FT Aを締結した場合

 この上で、「2020年に日本産品が米国・EU・中国において市場シェアを失うことによる関連産業を含めた影響」は、実質GDPが10.5兆円相当減少するとしています。

また、以下のようにも書いてあります。

※上記の実質GDP減少額は、産業連関分析により算出した経済波及効果を含む波及効果20.7兆円を実質GDP換算したもの。

しかし、見ても分かるように、この試算の条件はかなり限定的であります。 

 

そんな中、2013年3月、政府は、TPPによる関税撤廃の経済効果について、政府統一試算を公表しました。

この試算の条件は以下となっています。

①関税撤廃の効果のみを対象とする、②関税は全て即時撤廃する、③追加的な国内対策を計算に入れない

この上で、農林水産物の生産額は3.0兆円減少するが、それも含めたトータルの数字として、全体では、実質GDPは3.2兆円分底上げされ、このうち、消費の拡大が3.0兆円のプラスとなっている としています。

また、内閣官房のサイトにはこれに加え、PECC(太平洋経済協力会議)の試算が書かれています。

この試算の条件は、以下となっています。

関税撤廃に加えて、①非関税措置の削減、②投資・サービスの自由化、を含める

この上で、経済効果は「実質GDPの2%、1,050億ドル、約10兆円、底上げされる」としています。

 

しかし、政府の統一試算が出た後、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」が試算を公表しました。

それによると、関税を撤廃すると、農林水産物の生産額は約3兆4700億円減り、それに伴い関連産業の生産額は約7兆円減少し合計で10兆円を超え、これらを考慮に入れると、GDPは約4.8兆円減る としています。

 

B.労働条件はどうなる?

 Aのほうでも出てきた、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」によると、関税が撤廃されることによって、全産業で約190万人の離職者が出る としました。

この懸念に対し、政府は、関税が撤廃されることで輸出が増え、国内の雇用や収入に良い影響が出ることが期待される としています。 

 

また、TPPに加盟することで労働力が自由化され、加盟国から日本に労働者がやってくる。

特に途上国の労働者にとっては日本の賃金は魅力。

たとえ賃金を一般的な日本人より低くしても、魅力。

そうすると、高い給料を払わなくても良い外国人を多く雇うようになり、日本人の雇用は減り賃金相場が下がっていく... という意見もあります。

 

この懸念に対して政府は、

人の移動についての議論はされていますが、これは、ビジネスマンの出張や海外赴任などに関する手続等を容易にすること等を主眼として議論されているものです。

労働条件や環境基準については、貿易や投資を促進することを目的に、環境基準や労働者の権利保護の水準を引き下げないようにすることなどが議論されているようです。したがって、むしろ不当な労働条件の下での輸出拡大や環境基準切り下げの防止等の効果が期待されます。

としています。

 

C.貿易はどうなる?

こちらはメリットから。

TPPによる関税の撤廃により、貿易が活発になり、日本製品の輸出が増大する ということが考えられます。

 

しかし、日本は既にTPP参加国の多くと自由貿易協定などを結んでおり、関税を撤廃しても経済的効果は限定的だ という意見があります。

また、TPP参加国には発展途上国も多く、日本が参加しても市場が狭く、輸出先としてはあまり利益が見込まれず、経済的効果は限定的だ という意見もあります。

 

一方で政府は、

輸出相手国の関税が撤廃され、貿易手続きが簡素化されることで、日本の優れた工業製品などを輸出しやすくなり、<<中略>>また、世界的に評価の高い日本の高品質の農林水産物も海外に輸出しやすくなります。

としています。

 

D.デフレが起きる?

TPPに参加すると、安い商品が輸入され、それらに対抗するため国産製品は価格を抑えることになり、デフレが引き起こされる という懸念があります。

 

これに反対する論としては、関税がなくなり価格が下がることにより、逆に消費者は多くの物を買うようになり、原材料費が安くなった企業の利益が増加し、賃金が増え、必ずしもデフレには直結しない という意見があります。

 

E.企業の利益はどうなる?

こちらはメリットから。

TPPに参加することで、関税撤廃により安く物が売れるため、輸出企業は海外に進出しやすくなり、既に海外に工場などを所有している会社は、(TPPによる)共通ルールの導入により企業内貿易が効率化し、企業の利益が増えることにつながる という意見があります。

 

一方、海外にあまり進出していない企業には利益は出ない、そして、大企業の海外進出が進むことで、国内の下請け業者への受注が減る という意見もあります。

また、日本側にかけられている関税が撤廃されれば良い話ですが、逆に、日本がかけている関税が撤廃されることもあるため、その場合に不利益を被る という意見もあります。

 

こういった点について政府は、

輸出相手国の貿易手続や、ビジネスマンの入国・滞在手続が迅速化・簡素化され、投資ルールが整備されることで、大企業のみならず、すぐれた技術を有する中小企業もアジア太平洋地域の広大な市場に進出することが容易になります。また、流通などのサービス産業も海外に進出し易くなります。

としています。

 

F.価格はどうなる?

こちらもメリットから。

関税が撤廃されると、衣食住に関わる多くの商品が安く購入できるようになる と、政府は言っています。

 

しかし、地元の名産品などは、安いものに押されて生産者が減少し、収益が望めないと値段がさらに上がる という意見もあります。

 

G.その他

その他に考えられるメリット・デメリットを2つほど紹介します。

 

1つ目。

生産性が向上するのではないかということ。

農業人口が減り、工業へ人が移ることで、日本の生産性が向上する という意見があります。

 

2つ目。

外国企業が公共事業に多く参入し、日本企業が儲からなくなるのではないか・防災目的などの公共事業を外国企業に任せるのは安全保障上、大丈夫なのか という懸念があること。

これらの懸念に対し政府は、

日本は、WTO政府調達協定(GPA)(※)に加盟しており、既に、国や都道府県・政令指定都市による一定額以上の公共事業等については、外国企業も日本企業と同じ条件で参入できるようになっています。

※WTO政府調達協定(GPA):公共事業を含む政府調達(国・地方など)を外国企業にも開放することを目的とする協定、加盟国は2013年1月で42か国(TPP交渉参加国では米国、カナダ、シンガポールのみ。)

しかしながら、これまで日本の公共事業への外国企業の参入実績(参考資料へリンク)はわずかです。また、GPAで求められる英語等による事務対応としては、調達物件の名称・数量・入札期日等を公示(参考資料へリンク)することのみです。

なお、各国の政府調達のルールを整備することで、日本企業がアジアの公共事業等を受注しやすくなり、今後予想されるアジアの膨大なインフラ市場への参入が促進されることが期待されます。

仮に、日本の政府調達のルールに影響を与え得るような議論がなされる場合には、日本の特性を踏まえ、しっかりと対応していきます。

としています。

 

 

次回は「日本の制度変更」について見ていきたいと思いますが、その量が少なければ、もしくは、ISD(ISDS)条項についても書きましたし、書く内容がなければ、「知財」についても見ていきたいと思います。 

 

>>TPPが日本に与える影響(6)へ続く(現在執筆中)

 

 

<参照・引用>

▼A.

http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/110202/pdf/refdata5.pdf(農林水産省)

http://www.meti.go.jp/topic/downloadfiles/101027strategy02_00_00.pdf(経済産業省)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#4(内閣官房)

http://www.think-tpp.jp/nation/index.html(TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク)

http://www.tokachi.co.jp/news/201305/20130522-0015673.php(十勝毎日新聞)

https://www.think-tpp.jp/shr/pdf/report03.pdf(TPPの影響に関する各種試算の再検討)

 ▼B.

http://www.think-tpp.jp/nation/index.html(TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#3(内閣官房)

http://luna-organic.org/tpp/tpp-3-3.html(TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#7-4(内閣官房)

 ▼C.

http://www.toha-search.com/keizai/tpp.htm(とはサーチ)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AETPP%E4%BA%A4%E6%B8%89%E5%8F%8A%E3%81%B3%E8%AB%B8%E8%AD%B0%E8%AB%96#.E8.80.83.E3.81.88.E3.82.89.E3.82.8C.E3.82.8B.E3.83.A1.E3.83.AA.E3.83.83.E3.83.88.E3.83.BB.E3.83.87.E3.83.A1.E3.83.AA.E3.83.83.E3.83.88(Wikipedia)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#3(内閣官房)

▼D.

http://www.toha-search.com/keizai/tpp.htm(とはサーチ)

http://luna-organic.org/tpp/tpp-3-4.html(TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク)

http://matome.naver.jp/odai/2129497637940780601/2129498886941136803(NAVERまとめ)

http://yamazakijapan.blog.fc2.com/blog-entry-39.html

▼E.

http://www.toha-search.com/keizai/tpp.htm(とはサーチ)

http://matome.naver.jp/odai/2129497637940780601/2129497684840790703(NAVERまとめ)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AETPP%E4%BA%A4%E6%B8%89%E5%8F%8A%E3%81%B3%E8%AB%B8%E8%AD%B0%E8%AB%96#.E8.80.83.E3.81.88.E3.82.89.E3.82.8C.E3.82.8B.E3.83.A1.E3.83.AA.E3.83.83.E3.83.88.E3.83.BB.E3.83.87.E3.83.A1.E3.83.AA.E3.83.83.E3.83.88(Wikipedia)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#3(内閣官房)

▼F.

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#3(内閣官房)

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13116786113(Yahoo!知恵袋)

▼G.

http://matome.naver.jp/odai/2129497637940780601/2129498823541106703(NAVERまとめ)

http://ib-kensetsu.jp/2013/04/tpp-0410-dm1343-1.html(NETIBNEWS)

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#7-6(内閣官房)